2023.12.29ブログ
ファンズワース邸-美と実用の間-
あっという間に年末が来て、あと数日もすると新年2024年です。
時の経つ事の速さに年々驚くばかりですが、だからこそ一日を大切に過ごさなくては、と思います。
さて、先日ファンズワース邸についての記事を読み、依頼者であるファンズワース女史がこの名作で暮らす大変さを嘆いていた、という事を知ってとても分かる気がし、また複雑な気持ちになりました。
近代建築の巨匠と称されるミース・ファン・デル・ローエの代表作であり、その端正な美しさに建築を学ぶ者だけでなくとも感嘆するであろう、と思う素晴らしい建物であるファンズワース邸。
周りをガラスで覆われたその家は、美しさを追求する事で住むという実用がかなり押さえつけられているだろうと思っていました。
寡聞にして施主であるファンズワースさんが女性であった事を知らなかった時でもそう思っていたのですが、女性だった事を知った時にその苦労はいかほどだったろう…とため息が出た程です。
女性であるファンズワース女史が自分が一人で暮らす為に依頼したこの家は、美しさと引き換えに周りから中がほぼ素通しで見えるというプライバシーを保つ事が限りなく難しいもの。本当にため息が出てしまいます…。
機能を追求したものは美しいと思っているのですが、美を追求したものが使い易いとは限りません。例えばハイヒール。その美しいプロポーションの高いヒールを履きこなすのは大変な事で、以前は「靴」と「苦痛」をかけてもじった造語である#KuTooというハッシュタグが生まれた程。
ガラスは複層ガラスでさえ熱が出入りするという事で内窓が取り付けられる位に熱伝導率が高い素材です。ですから、夏はその暑さが、冬はその寒さが室内に窓を通じて容赦なく入って来ます。
やはり名作で名高い安藤忠雄さんの初期の名作、住吉の長屋はコンクリート打ちっぱなしで断熱材を美しさの為に全く使っていなかった為、施主が暑さ寒さの大変さを訴えた事があったそうですが、プロボクサーでもあった安藤忠雄さんは「アスレチックに行け(体を鍛えて暑さ寒さを克服しろという事か)」と言ったとか言わなかったとか…。
美を取るか実用を取るか、と考える時にふと思い出されたのがロシア語同時通訳者であり文才にも溢れた米原万里さんの書いた「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」という大変刺激的なタイトルのエッセーです。
この美女、醜女(私はしこめという読み方の方がまだ良いかな、と思ったり…)というのは、訳出した言葉の流麗さを指しています。
一字一句直訳的に訳すのは間違いは無いものの、聞いていて何となく耳当たりが良く無く、分かり易く意訳にすると元の言葉のどこかが失われたり大げさになったり。
美しく実用的にというのは言語に限らず大変困難な事なのだな、とやはりまたため息が出るのでした(苦笑)
そんな中でも、出来るだけ美しく、でも住む方の為にはまずは実用的であるようにと心掛けてオフィスKは仕事に向き合っています。美しいだけ、実用的なだけではお客さまに満足して戴く事は出来ないと考えているのです。
どうしても譲れない部分は少し実用的な点を曲げる事になるでしょうが、その時にはそのデメリットをしっかりとお伝えするようにしています。そうすれば、見栄えで選んで住んでから困るという事が無くなるのでは、と思うからです。
今日はちょっと話が大きくなってしまいましたが、年末に来年の事を考えた時に改めてオフィスKのスタンスを自ら確認し、未来のお客さまにお伝えする機会となればなと思い書いてみました。
厚木の暮らしをより良くするオフィスK。"暮らしを・ちょっと・気分よく"したいなと思った時、思い出して戴けますと幸甚です。
時の経つ事の速さに年々驚くばかりですが、だからこそ一日を大切に過ごさなくては、と思います。
さて、先日ファンズワース邸についての記事を読み、依頼者であるファンズワース女史がこの名作で暮らす大変さを嘆いていた、という事を知ってとても分かる気がし、また複雑な気持ちになりました。
近代建築の巨匠と称されるミース・ファン・デル・ローエの代表作であり、その端正な美しさに建築を学ぶ者だけでなくとも感嘆するであろう、と思う素晴らしい建物であるファンズワース邸。
周りをガラスで覆われたその家は、美しさを追求する事で住むという実用がかなり押さえつけられているだろうと思っていました。
寡聞にして施主であるファンズワースさんが女性であった事を知らなかった時でもそう思っていたのですが、女性だった事を知った時にその苦労はいかほどだったろう…とため息が出た程です。
女性であるファンズワース女史が自分が一人で暮らす為に依頼したこの家は、美しさと引き換えに周りから中がほぼ素通しで見えるというプライバシーを保つ事が限りなく難しいもの。本当にため息が出てしまいます…。
機能を追求したものは美しいと思っているのですが、美を追求したものが使い易いとは限りません。例えばハイヒール。その美しいプロポーションの高いヒールを履きこなすのは大変な事で、以前は「靴」と「苦痛」をかけてもじった造語である#KuTooというハッシュタグが生まれた程。
ガラスは複層ガラスでさえ熱が出入りするという事で内窓が取り付けられる位に熱伝導率が高い素材です。ですから、夏はその暑さが、冬はその寒さが室内に窓を通じて容赦なく入って来ます。
やはり名作で名高い安藤忠雄さんの初期の名作、住吉の長屋はコンクリート打ちっぱなしで断熱材を美しさの為に全く使っていなかった為、施主が暑さ寒さの大変さを訴えた事があったそうですが、プロボクサーでもあった安藤忠雄さんは「アスレチックに行け(体を鍛えて暑さ寒さを克服しろという事か)」と言ったとか言わなかったとか…。
美を取るか実用を取るか、と考える時にふと思い出されたのがロシア語同時通訳者であり文才にも溢れた米原万里さんの書いた「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」という大変刺激的なタイトルのエッセーです。
この美女、醜女(私はしこめという読み方の方がまだ良いかな、と思ったり…)というのは、訳出した言葉の流麗さを指しています。
一字一句直訳的に訳すのは間違いは無いものの、聞いていて何となく耳当たりが良く無く、分かり易く意訳にすると元の言葉のどこかが失われたり大げさになったり。
美しく実用的にというのは言語に限らず大変困難な事なのだな、とやはりまたため息が出るのでした(苦笑)
そんな中でも、出来るだけ美しく、でも住む方の為にはまずは実用的であるようにと心掛けてオフィスKは仕事に向き合っています。美しいだけ、実用的なだけではお客さまに満足して戴く事は出来ないと考えているのです。
どうしても譲れない部分は少し実用的な点を曲げる事になるでしょうが、その時にはそのデメリットをしっかりとお伝えするようにしています。そうすれば、見栄えで選んで住んでから困るという事が無くなるのでは、と思うからです。
今日はちょっと話が大きくなってしまいましたが、年末に来年の事を考えた時に改めてオフィスKのスタンスを自ら確認し、未来のお客さまにお伝えする機会となればなと思い書いてみました。
ちょっとしたことで、暮らしは楽しく、過ごしやすくなります。
厚木の暮らしをより良くするオフィスK。"暮らしを・ちょっと・気分よく"したいなと思った時、思い出して戴けますと幸甚です。
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